2008年03月20日

まほうつかい<1>


メイジがたくさん出演しているので、
メイジ同士の違いが発覚する作品として執筆しようと思い立ち
突然書き始めたものです(笑
ダークエルフの体質のお話し。
4にだけエスペラントも登場します。


出演者
フローリア
ジネット
シルフィーア
エスペラント

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まほうつかい
「んもーすごかったんだから!さすがに死ぬかと思っちゃったわぁ!」

興奮気味にそんな台詞を吐いたのはジネットだった。
死ぬかと思った、だなんて穏やかじゃない台詞の割には
とてもとても嬉しそうで、楽しそうで。

「っていうか、危ないでしょ〜?
 その時クレリックさん1人だったらしいじゃない。」

心配そうにそう言ったのはシルフィーアだ。
クレリック1人とメイジ2人じゃ危ないどころじゃないよーと、
どう体を動かしたらそうなるのかは不明だがぴょこぴょこと
跳ねるような動作をしている。

「そう!だからあたし、ずっとポーション握ってたわよ。」

こういうときは絶対手放せないのよ!と、
これまた興奮冷めやらぬ様子で続けるのだから
全然懲りてはいない様子である。

「だ…だいじょうぶなんですか?」

話しの内容に圧倒されてしまってまともに喋れなくなっているフローリアも
話しの輪の中に入っていた。
女の子同士すぐに仲良くなった彼女達は、見かければ身を寄せ合って
それぞれの出来事を話して聞かせあったりする仲になっていた。
フローリアは今日、鍛錬石を作っているシルフィーアのお仕事を横で
見学させてもらっていたのだが、そこへ
「ねぇ帽子あまってなぁい?」なんて言いながら登場したジネットが加わり
いつの間にか倉庫のすぐ傍でかたまって井戸端会議となっていた。
荷物整理に来たほかの冒険者に「こんな場所で…」といったような
苦笑を向けられていたりする。

「大丈夫、大丈夫!こうでなくっちゃ面白くないじゃない。」
「なんかすごいですね。」
「そう?」

ジネットに限らず、サージェスが戦っているところも
エスペラントが戦っているところも見たことはないフローリアだったが
メイジさんって凄いなぁ、と何となく思っていた。
弓や剣は確かに扱い方が分からなければ戦うことはできないけれど
詳しく教えてもらわなくったって、どのようにしたら攻撃できるのか
それくらいは頭で分かる。
剣は振り上げて叩き落せば斬ることができるし、
弓は矢をつがえて引き絞り狙い定めて放てば遠距離からの射撃ができる。
常識ともいえないような一般常識だ。
でも魔法は違う。そういう意味ではクレリックさんも凄い。
この怪我をしている人を治せといわれても
自分には包帯や絆創膏を用意するくらいしかできないし、
手の平から炎を生むことも雷を呼び出すこともできはしない。

「そ、そうねぇ、言われてみればそうなのよねぇ…。」

あんまり深く考えたことないけど…
と言いかけたジネットだったが、何故か途中で言葉を切った。

「ジネットさん?」

お喋りなはずのシルフィーアも珍しく口を引き結んで
何かを考えている様子なのに気づいて、フローリアは首をかしげた。

「ご、ごめんなさいね、なんでもないわ。
 でもそうね。あたしがあんまり魔法のことを語ると、怒られちゃうのよ。」
「え?どうしてですか?」

そう問いかけたら
ジネットの、月色のキャッツアイが切なげに閉じられて。

「魔法使い同士もね、実は分かり合えない存在なの。
 そして、あたしは一番“魔法使い”を、分かってあげられない魔法使いなの。」

薄く開いた月色の瞳が、笑みを模る。

「“魔法使い”に対して、一番残酷な魔法使いなのよ。」
「ざん、こく…?」

また、思考が止まってしまう。
何か言いたかったけど、何も言えなくて
口を開いたり閉じたりしたけど何も言葉は出てこなかった。
そうしたらジネットが「ごめんなさいね」と呟くのが聞こえて、
目を合わせたら、魔法のことはまた別の誰かに聞いてみて、と言われた。

「ジネット、時間大丈夫?」

ずっと黙っていたシルフィーアが急にそう言った。
その言葉にジネットの口が「あ」の形になった。

「いっけない、あんまり大丈夫じゃぁないわ。
 ついつい喋っちゃうのよねぇ。」

くすくす、とまた楽しそうに笑う。
先ほどまでのちょっと切なそうな表情は消えていた。

「また掃討作戦に出るの?」
「もちろんよ、あたしの得意分野なんだから。ここに出なきゃぁね?」

笑いあった後、ジネットは猫のようにひとつ伸びをすると
小さくガッツポーズを決める。

「がんばるわ。」
「あ!ジネットさん。」

ふと思い出して、鞄を探りながら
今にも走って行ってしまいそうだったジネットを呼び止めた。

「なぁに、フローリアちゃん。」

とても急いでいる人とは思えないのんびりした声が応えてくれる。
そんな彼女はやっぱり素敵だな、と思いながら
小さな小瓶をいくつか取り出した。

「これ…もっていってください。」
「あら、フローリアちゃんの分じゃないの?」
「わたし、いっぱい持ってますから。」

小さな小瓶に入ったポーション。
どれくらい役に立つのか分からなかったけれど。
ジネットはとても嬉しそうに笑んで、差し出された瓶をそっと受け取った。

「ありがと。大事に使うわ。」
「怪我…気をつけてくださいね。」
「ううん。」
「…え?」

緩く首を左右に振ったジネットに驚いて目を見開いたら
悪戯っぽい表情になって

「怪我はするわ。
 …でも死なない。」

一言そういうと今度こそ、じゃぁねと言葉を残して身を翻すと
人込みの中へと姿を消した。

「ねぇ、お散歩いこ?」

後姿を見送ったままぼんやりしていたら、
そんな風に言うシルフィーアの声が聞こえた。

「お散歩ですか?」
「うん、お散歩ー。」

恐らく適当と思われるが、どこかを指差しながら
いこういこう、と連呼している。
シルフィーアの方を見たら、にこっと何故かとても嬉しそうに微笑まれる。
もちろん嫌というわけではないし、
エルドリンの中では未だに迷子になるくらいなので
お散歩をして慣れるというのもいい考えだ。
フローリアは迷わずこくりと頷いた。
posted by 翼翠 at 16:00| まほうつかい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする